La gran historia〜遠き日より憧憬を込めて〜
 
剣と魔法のファンタジー異世界【Granhistoria】。
記されることのない歴史を記そう。
語られることのない歴史を語ろう。
そこに、伝えたい想いがあるから―――
 
◇「優しい犠牲者」
 カイン:
 女神に横恋慕され恋女房を殺された青年。
 妻を殺された衝撃に〈神喰い〉の能力を目覚めさせる。
 
 ビオラ:
 最期まで夫を愛し、嫉妬した女神に殺された女性。
 
 紅蘭【こうらん】:
 後の歴史にて〈魔王〉と呼ばれ恐れられる、真紅の双眸と黒髪の強大な魔力を有する魔力の民の最初で最後の長。
 創世神手ずから生み出した三種の守人の一種にして、『世界を〈澱〉から守るための濾過機構』たる魔力の民の最初の一人。その本質を知る者達からは〈浄化の柱〉とも呼ばれる。
 人や神の過ぎた欲望により発生した膨大な〈澱〉から世界を護るために、狂気を纏う神と人間ごと南大陸を異空間に封じた。以来、魔力の民の本質を知らぬ人間達から〈魔王〉と呼ばれ世界中から恐れられる存在になる。
 本来は心優しい女性だが、自ら冷たい仮面を身に付け〈魔王〉を演じ、人間の救世主に殺させた。
 後の世でのあからさまな魔術師迫害の原因。
 
 志希【しき】:
 〈救世主〉に担ぎ上げられた、氷雪の民の母を持つ南大陸唯一の王国の将軍の息子。
 紅蘭とは野外訓練中に偶然命を助けられ、何度も再会を繰り返し好意を寄せていた。
 独り生き残った後、南大陸の生き残った人々を纏めて旅をし、北大陸の荒野に国を築いた。
 聖都・クレンシアの初代法王。
 
 
◇「緑炎の少女が住む村」
 エキザ・カム:
 辺境の村で宿屋兼食堂を営む少女。少々小柄で、滅法気が強い。酔漢、喧嘩沙汰を軽くあしらい、包丁一本で強盗団をしばき倒す。
 そんな彼女の信望者は多く、客足は上々。
 夏場でも肌を晒さない彼女の全身には、様々な緑(深緑、新緑、青緑等)によって描かれた美しい痣があり、幾何学模様にも蔦模様にも炎にも見える。(実はとある男神の聖痕=所有印)
 
 ラグラス:
 エキザ・カムに聖痕を与えた青年神。
 
 
◇「紅瞳の魔術師」
 ラン:
 黒髪紅瞳の不良魔術師。神級の魔力を持つ稀有なる存在。一所にじっとしているのが苦手で、〈島〉をたびたび飛び出す問題児。あらゆる精霊と心を通わせる事ができ、本人曰く「精霊に愛される性質」。
 本名は黒狼【ヘイラン】。伝説の〈魔王〉の生まれ変わりの如き容姿と魔力故、村では忌み子だった。
 古代竜を養い子に持ち、〈歌を捧げる者〉の二つ名を持つ巫子を愛し、彼女のために命を落とす。
 後の世では〈竜の養い親〉、〈聖域の守護者〉などの名で呼ばれる。
 
 エヴァ(正式名はエヴァンジェル=エヴァーラスティン):
 右瞳に母神の聖痕、左瞳に時女神の聖痕を持つ、白銀の髪と紫の双眸の巫子。
 〈二柱の創世神〉より人の世の最高位の巫子に贈られし名〈福音の巫子【エヴァンジェル=エヴァーラスティン】〉を贈られた巫子。生まれた時に贈られた為、彼女のみ個人名でもある。
 時女神に歌を捧げる者にして稀代の歌姫。
 時女神の力は不用意に干渉すれば世界を崩壊させかねない事から、巫女として女神が眠る大地に在り、その傍にて女神の眠りを護っている。
 気の向くまま歌っているところに時女神に愚痴りに来たランと出会い、彼と心を通わし想い合うようになる。
 不老不死を望んだ双頭蛇神の干渉から女神を護る戦いにてランを失い、全てが収束せし後、哀しみから妹の血の中で魂のみ深い眠りにつく。
 妹の子孫は必ず紫眼の双眸を持つ女として生まれ、〈女神に歌を捧げるもの〉の運命【さだめ】を背負い縛られる事になる。
 
 
◇「風炎の廻り」
 朝霧【あさぎり】:
 戦火に巻き込まれ生き別れになった妹を探している少年にしか見えない少女。
 故郷は戦の飛び火で滅ぼされた。山間の穏やかな地で育つ。
 炎の精霊王の加護を持つ。
 獲物は炎を物質化した身の丈程の大剣。片手で振り回す様は圧巻である。
 
 月桂【げっか】:
 一匹狼の遺跡専門の盗賊。
 出会った頃はガキが無茶してやがるとしか思ってなかったが、やがてだんだん異性として惹かれていく。
 風の精霊王の加護を持つ。
 獲物は風を物質化した双剣。相手の剣を掻い潜り、懐に飛び込んで行く。
 
 梅桃【ゆすら】:
 朝霧の妹。
 地の精霊王に愛された魔術師。優秀な薬師でもある。
 
 海風【みかぜ】:
 小国モルゼの若き王。
 梅桃に重傷を負っていたところを助けられた。
 
 
◇「紫眼の占者」
 希紗良【キサラ】:
 紅髪、水色の右瞳、紫銀の左瞳を持つ通称〈紫眼の占者〉。
 放浪の占い師。100%の的中率を誇り、その左瞳は過去・現在・未来を見通す。
 元々両瞳とも水色だったが、時女神より伴侶の証として彼女の左瞳を贈られる。
 時女神の我が侭な願いにより20代前半の頃より体の変化が止められており、彼女が在る限り存在し続ける=死なない。同時に、知識と経験は重ねることができるが、どれだけ体を鍛えても元々持っている身体能力を超える新しい能力を身につけることはできない。
 時女神とは懐かれ絆されすったもんだの末に、たった一つの契約を交して伴侶になった間柄。その契約とは、「愛した女の魂が現世に巡りくるたび、その魂を何よりも優先させる」こと。かつて共に生きる約束をして果たせなかった幼馴染のことをずっと悔いていて、彼女の魂がこの世に巡ってくるたびにその魂持つものの為だけに在るため、時女神に承諾させた。以来、男に生まれようが、獣に生まれようが、植物に生まれようが、その魂の誕生と共に傍らに在り、見守り続けている。最長で、樹木に生まれた時の300年。契約故に文句も言えず、さりとて嫉妬せずにはいられない時女神の一方的な八つ当たりは、八つ当たられるシヴァや春日らに諦めの境地で『夫婦喧嘩』と揶揄されている。
 本気でキレると、「決して外さない占者」である事実を逆手に取った『言霊の呪い』で相手に破滅の呪いをかける。
 
 
◇「天捧の誓い」
 天狼【てんろう】:
 漆黒の髪、黄金の双眸を持つ異世界より跳ばされてきた少年。初代〈鍵〉。
 やがて生まれる〈鍵〉の定めを継ぐ者の為に、阿修羅を残した。
 
 海斗【カイト】:
 黒檀の髪、赤紫の左瞳と深海の右瞳、人間不信かつ人間嫌いの感情の起伏に乏しい死神の二つ名を持つ傭兵。魔力の民の血の保有者だが、血が目覚めていないため魔術師ではない。
 幼い頃に攫われた西大陸に在る小国の王子。天狼に出会いだんだん惹かれていく。
 激情に捕らわれ狂気に陥りかけた時、天狼に身を呈して激情を受け止められ救われる。
 天狼を護る事を己に誓い、天狼の頼み故にやがて大陸を統一し、〈創王〉の名で呼ばれるようになる。
 「だったら俺はお前の『牙』なんだろう」
 
 
◇「〈神狩り〉の双子」
 柊【ひいらぎ】:
 月桂と朝霧の双子。外見は母親似の少年。
 知能犯タイプの悪ガキ。妙に大人びている。
 親子と名乗らぬまま月桂を無理やり旅に巻き込んだ前科あり。
 15歳と偽る12歳。標準より小さい。
 風の精霊王の加護を持つ。
 
 葵【あおい】:
 月桂と朝霧の双子。外見は父親似の少年。
 片割れとは正反対で純真無垢。誰にでも懐くが、害意を持つものは本能で見抜く。
 柊がお使いの旅に出ている間、家に残って母親の手伝いをしていた。
 標準より小さい12歳。
 炎の精霊王の加護を持つ。
 
 海奈【かいな】:
 海斗の妹、双子の従妹。モルゼの巫女姫。
 〈聖痕〉を通して世界を循環する魔力に触れ、〈柱〉の最期が近付いていることを知り、腐り朽ち果てようとしている〈柱〉のもとに赴き、次代の〈柱〉を身籠ることを望んだ。
 
 
◇「世界樹の巫子」
 黎樹【レイジュ】:
 金糸の髪、深緑の左瞳、金緑の右瞳を持つ世界樹の巫子。生命【いのち】の束をその手に持つ者。
 世界が生まれた時からずっと母神と二人だけで次元のずれた空間にいたが、やがて人恋しさから自らの手の内にない命を持つ存在を異世界から召喚する。
 凪と同じ時間を生きる為に、母神の右瞳を返し次元のずれから地上に降り立つ。
 凪と魂そのものに誓約を交わし合い、何度生まれ変わろうとずっと一緒に在り続ける。誓約の証は『記憶』と互いに入れ替えた左瞳。
 凪には“レイ”と呼ばれている。
 子供を産んで直ぐに亡くなった。
 
 凪【ナギ】:
 銀の髪、人に在らざる縦に細い瞳孔の金瞳をした黎樹に召喚された異世界の青年。
 行き成り呼ばれて初めは怒っていたが、黎樹の寂しさを知るうちに次第に絆されていき未来永劫傍に在る事を誓約し合う。
 特殊な育ち方をしていて戦闘に長けている。
 自らの『痛み』を周囲に見せない面があるが、懐に入れた相手限定で甘え癖や抱きつき癖がある。
 懐に入れたものにはとことん甘いところがあり、根本は黎樹よりも凪の方が優しすぎる性格をしている。
 子供が生まれる前に、異界の大気と肌が合わず亡くなった。
 ※Oneの英理と雅の息子。
 
 
 ◇「風帰る地の民」
 蒼唯【あおい】:
 陽だまりの髪と碧玉の双眸を持つ青年。
 本名は碧儀【あおぎ】。東の皇帝の妾腹の子で、母親は〈風の舞姫〉の二つ名を冠された風の民。狂的なまでに己に執着する皇帝に無理やり後宮に止められ、皇帝を愛してはいたが意思に反して無理やり止められた事を憎み、淀んで死に至った。
 淀んだ風より生まれた為、生まれながらに内臓に幾つもの欠陥を負っている。
 
 沙羅【さら】:
 白銀の髪と氷色の瞳の風の民。
 成人後、単独で風の大地を旅していた折に蒼唯を拾った。
 
 
◇「白銀の歌姫」
 サクセッド:後に瑠璃と名付けられる。
 白銀の髪と紫の双眸を持つ最後の〈女神に歌を捧げるもの〉。
 海辺の街で自分の歌を純粋に望んだ海理を気に入り、一晩だけ共に過ごす。
 我が子と共に放浪を続けるが、彼女に歪んだ欲望を向ける男から我が子を護る為にたった一人で対峙し、相打ちとなって海に転落する。
 海神の聖痕持ちである海里に愛される彼女を海に住まう精霊達が助け、西大陸の浜に打ち上げられた彼女をずっと探していた海里に保護される。
 死の淵を彷徨った影響により記憶を失った彼女に、名を知らぬ海理は瑠璃と名付け妻として大切に暮らす。
 
 海理【カイリ】:
 海斗と天狼の孫に当たるシエロの第三王子。
 世間勉強を兼ねた5年間の(強制)放浪中、〈白銀の歌姫〉と出会い彼女の歌と彼女自身に魅了される。
 一晩だけ恋人として過ごした彼女が忘れられず、ずっと追い続けていた。
 自国の浜辺で瀕死の彼女を見つけ保護する。
 記憶を失っていた彼女に瑠璃と名付け、求婚し生涯大切にする。
 
 
◇「夢見る刀」
 ジークフリート:
 若かりし頃、傭兵ギルドの依頼で古代竜・銀を狩りに来たはずが、三日三晩戦った末 意気投合し、三日三晩酒を酌み交わして親友になった。
 阿修羅と共に〈鍵〉を継ぐ者を求めて旅をし、商都の或る滅ぼされた一つの町でシヴァを見つける。
 氷雪の聖地に連れて行き、厳しくも清冽な地でシヴァを育み鍛えた。
 
 
◇「深海と宵闇の継承者」、「黄昏の目覚め」、「約束の絆」
 ナハト:許しを担う者(魔力の民に畏敬を込めて魔王、陛下とも呼ばれる)
 真名は、ナハト=カーズ=サクリファイス。ナハトが個人名、カーズが魔王、サクリファイスが〈柱〉を表している。
 深闇の髪、宵闇の瞳の青年剣士。
 その身の内に〈聖域の守護者〉ランの魂を宿している。産み月間近に力尽きた母親と共に死に逝こうとしていたところをランによって魂を身体に留めるため背を押され、赤子の本能で縋り付き、引きずり込んでしまった。ランはナハトに影響を及ぼさないよう常に深層にて眠っている。感情が昂ぶると無意識に宿す魂と同調して力を引き出す。瞳が紅く染まるのが兆候。
 ナハトは知らないが、父親が先代〈柱〉で、自覚していないだけで長と同等の〈器〉持っている。だから、二つの魂を抱えて壊れないでいられる。
 〈神喰い〉能力発動時は、蔓植物にも似た紅い痣が右掌を起点に這い上がる。発動する力が大きいほど痣も大きくなり、最も大きい時は顔にまで痣が浸食する。
 シヴァの性質の悪いからかいにもわりかし動じず、女性体のシヴァをお風呂に入れて服着せるのが面倒だからって裸のまま抱きかかえて熟睡できる筋金入りの理性の人。襲っても返り討ちに合うのがオチだと悟っているとも。
 亡き恋人ヒルデ=ブリュンヒルドの形見である指輪を肌身離さず持っていて、守れなかった初恋を今でも引きずっている。
 常に穏やかな雰囲気を纏う子供に好かれやすい人柄だが、シヴァと引き離そうとする者は即座に敵と見なし一切容赦をしない隠れS。
 
 シヴァ:裁きを司る者(風の民に巫子姫とも呼ばれる)
 真名は、シヴァ=海璃=モルゼ=シエル=エヴァンジェル・エヴァーラスティン=ラグナロク。シヴァが普段名乗っている母親から貰った名前、海璃がシヴァの存在を知った父親から貰った名前、エヴァンジェル・エヴァーラスティンが〈福音の巫女〉、ラグナロクが〈破壊神〉を表している。
 白銀の髪と深海の瞳の剣士。左瞳に母神の聖痕である世界樹の葉、右瞳に時女神の聖痕である流転の輪、左背に〈心臓〉の証である白い竜翼、右背に〈鍵〉の証である黒い翼(〈心臓〉であるナハトの力のイメージ)、左胸にナハトからの誓痕である〈六花〉を持つ。蒼眼は海鱗神モルゼの加護の証。破壊神を開放している時は金瞳となる。脱がしたら痕だらけの身体(笑)。
 時女神の巫子であったエヴァの妹の子孫であり、『目覚めた』エヴァの魂を宿す者。
 母親は歌姫の二つ名で呼ばれた歌い手、父親は知らない。幼い頃母親を失った。
 紫の雷を宿す刀、『阿修羅』の使い手。阿修羅は元々天狼に惚れて契約した雷精で、天狼より〈鍵〉を補助するものとして能力と力と器を与えられた。ずっと天狼の先見が杞憂に終われば良いと願いつつ、その望みを叶える為に存在していた。
 天狼が天音と口付けた際僅かに取り込んでいた“〈心臓〉を得たラグナロク”=破壊神の遺伝子を受け継いでいる。性別を固定していた『想い』の途切れにより本来の中性体に戻るが、〈心臓〉を定めた後は〈心臓〉の望みにのみ反応して性別が変わる。
 ナハトの中で目覚めたラン絡みで、偶にエヴァに身体を乗っ取られる。しかも、エヴァの影響で女性体に変わるので、そのうち知らぬ間に妊娠でもしていそうで戦々恐々としている。
 基本は、過保護で心配性で家族至上主義の家族さえ幸せならそれで良し。家族以外は本気でどうでも良く、家族以外に対する執着心は無い。自他共に認めるドS。
 〈柱〉を継承したナハトを生かすため、ナハトを己が〈心臓〉に定めた。
 ルチアを人間の負の感情にて殺され、ナハトを人間が生み出した〈澱〉を浄化する為の生贄にされたことで人間そのものに嫌悪を抱いていたが、子を産み育てる過程で子供を通して人間そのものを見つめ直し、もう一度だけ個としての人間なら信じてみても良いかと思い始めている。
「我が内に宿りし世界を破壊する力よ、その意思と最も親和する過去の我が身を器として顕現せよ。
 我が内に降ろせし世界を創造する力よ、その性質と最も親和する未来の我が身を器として顕現せよ」
「我が過去の生みし破壊の矢、我が未来の生みし創造の矢。
 扱うは己が骨から弓を生みし現在の我。
 この二矢に我が三つの意思を乗せ、共に唯一つの望みを叶えん」
「世界よっ! 俺から俺の『家族』を三度も奪えると思うなっ!!
 漆黒の矢よ、既存の法則を破壊せよ!
 純白の矢よ、世界の法則を書き変えろ!」
「人間も神も世界も、いつまでもだらだらと甘えるなっ!
 どれだけ魔力の民の慈愛に胡坐をかくつもりだっ!
 自分で生み出した〈澱〉ならば、己が身を費やして贖うがいいっ!!」
「我、二人目の鍵シヴァは、汝、ナハトを我が〈心臓〉に定める。
 汝の望みが我が望み。
 汝の死が我が死。
 我は我が命運【さだめ】を汝に委ね、対価に汝の運命【さだめ】を共に負わん」
「ナハトが制御できない力は、俺が代わりに御します。
 ナハトが抑制できない本能は、俺が代わりに抑えつけます」
「だから、勝手に犠牲になるなんて許さないっ」
   
 ルチア:
 真名はルチア=マリア=カラス。歌うことしかできない小鳥、の意。
 シヴァの最初の女にして恋人。酒場の歌姫。金髪に琥珀の瞳。シヴァの〈鍵〉。
 力を使用すると片目だけ完全に真紅に染まるほどの魔力を持つ。魔術師である事を隠して暮らしていたが、火事で逃げ遅れた子供を助けるために力を使いばれてしまう。
 周囲の人間は彼女に火事の罪を着せ、処刑してしまう。
 肉体の縛りから解き放たれた魂は〈流転の環〉には戻らず、破壊神を覚醒させたシヴァに宿り〈封印の鍵〉となる。魔力の民の王であるナハトだけが、その魔力を分け与えることで一時的に目覚めさせることができる。
(オフレコ)
 当時、ルチアのお腹にはシヴァの子供がいて、男ならイデア、女ならマリアと名付けようと話し合っていた。
 死の間際、有りっ丈の魔力を使用して胎児を魔力の子宮で包みこみ異世界に転移させた。真名白の父親の祖父。
「風よ。
 風よ。風よ。風よ。
 我が意を汲み、我が意に沿えっ」
 
 
◇「風吹く地の刃者」、「望郷の佳人」、「黄昏の目覚め」、「風に寄り添うひと」
 春日【ハルヒ】:(風の民に畏敬を込めて風王とも呼ばれる)
 真名は春日=碧瑠=蒼藍。余計な名など要らないと言ったにも関わらず伯父に押し切られた。
 陽だまりの金髪と碧玉の双眸の少年。左瞳に紅刃の聖痕である朱金の鱗を、心臓に幼い頃に契約した風精・蒼姫を宿している。碧眼は蒼蛇神、碧瑠【へきる】の加護の証。
 深紅の刀身を持つ刀、紅刃【くれは】の使い手。嘗て人間に祭られると同時に封じられていた荒ぶれる炎蛇神が宿っていて、自ら主を選び気に入らなければ決して鞘から抜けない。母親の死に際に譲り受けた。
 素手で大岩を叩き割れるくらい怪力で、血に酔う戦闘狂な一面を持ち、キレると凶悪。八つ当たりで敵軍を壊滅させるくらいやってのける。
 春を迎えた日の夜明けに生まれた風の民。口が悪く、結構辛辣で皮肉屋な性格とは裏腹な優しげで中性的な佳人。
 やりたいことしかやらない自由気侭な性格の割に、周りがさらに輪をかけた破天荒なためフォロー要員にならざる負えない苦労人。
 強くて、誇り高くて、カッコ良い美女が好み。
 (オフレコ)
 曾祖母からの血の影響で巫女気が強く。紅刃や蒼姫と融合することができる。混ざる割合が大きいほど彼女達の影響を強く受け、8割を超えると身体が完全に人の範疇を超える。ただし、一つの肉体に三つの意思を持つことになり狂いやすくなる。全く別の見方をする三つの人格が一つの脳で同時思考するようなもの。
 恋人と死に別れた後は、素人には手を出さない主義を宣言して商売女ばかり相手にしている。それなりに馴染になった女も数人いる。
 春日の子供を欲しがった桜璃の我儘により、冬夜との間に一子が居る。
 「んーー、まあ、元が桜璃の我儘だし。望んだ桜璃と、父親の冬夜と、産んだ俺と、三人の名前全部にちなんだ名前にしよう、ってね。
 『冬』の『桜』で、天から降る白い花、『雪』。『春』の『雪』で、初春の風に乗って舞う冬の欠片、『風花』。
 悪くない名前だろ?」
「壊れてない守人なんているのか?
 風の民は、己の楽しみのためなら目的と手段を入れ替える快楽主義の確信犯。
 氷雪の民は、誓いを果たすためなら死体の山だって築く徹底主義の狂戦士。
 魔力の民は、惑星【ほし】を護るためなら自己生存本能さえ自ら殺す博愛主義の自己犠牲症候群。
 なぁ? 『まともな』守人なんて最初からいやしねぇーんだよ」
「三種の守人はあくまで『人間だった』。しかし、人間こそが守人を人ならざる者に『昇格させたんだ』。
 真っ先に除外されたのは魔力の民だった。人間よりも遥かに長生きすることも、生きながら腐れ最期は自ら火に包まれ死ぬ姿も、『普通の人間』には自分たちとは異なる恐ろしい生き物にしか思えなかったんだろうな。
 次に異種と見なされたのは風の民だ。『普通の人間』と違って生涯の大半を一番美しい年頃のまま在り続ける姿は、やはり異様に映ったんだろう。そして、主に女達が抱いただろう嫉妬や羨望、憎悪から、人間じゃない別の生き物扱いされるようになったんだろうな。
 最後に別格扱いされたのは氷雪の民。年の取り方が『普通の人間』と同じ彼らは、元々特別な力を持たない『普通の人間』でもなろうと思えばなれることからも、あまり人外扱いされることはない。ただ、『普通の人間』が持つ欲の判り易い形で在る富や名誉では釣れない彼らを、憧憬や尊敬、扱い難さや面白く無さを込めて、自分らとは一線を画する者とみるようになったんだろうな。
 人間にとって、魔力の民は恐ろしい力持つ魔物、風の民は美しい生きた宝石、氷雪の民は最強の兵器なんだよ。『人間じゃない』んだ」
「俺に剣術を教えてくれた父親に最初に言われた言葉がある。
 
 汝、刃持って傷つけるならば、汝もまた刃以って傷つけられることを覚悟せよ。
 汝、力持ってを踏みにじるなら、汝もまた力以って踏みにじられることを覚悟せよ。
 
 要は、因果は巡るってこと。
 そろそろあんたも巡って来る番だ」
「舞い踊れ、紅刃」
「女ってのは口説いて尽くして拝み倒して手に入れるもんなんだよ。力づくで手に入れようなんざ何処の最低男だ。そんな男に惚れる風の民はいねぇよ」
 
 冬夜【トウヤ】:
 鉄色の髪と鋼色の双眸の少年。左瞳に氷雨の聖痕である氷銀の鱗を宿している。
 氷蒼の刀身を持つ刀、氷雨【ひさめ】の使い手。嘗て人に祭られると同時に封じられていた荒ぶれる炎蛇神と対を成す封じの要だった水蛇神が宿っていて、紅刃の使い手を止められる者を主に選ぶ。元傭兵の養父から譲り受けた。
 無口・無表情・無感情な三無の権化。常に凪いでいて滅多に感情を波立たせないが、一度決めると梃子でも動かない頑固な面も持つ。現状にそれなりに満足している、本命にとことん弱い隠れ苦労人。
 春を迎える前夜に生まれた氷雪の民。
 強くて、靭くて、だからこそ切ない相手に伝える気の無い恋をしている。
(オフレコ)
 戦災孤児。
 戦場に巻き込まれた小さな村の焼け跡で、酷い姿で殺されている若い女が身を呈して隠していた地下の収納庫で放心していたところを通りかかった氷雪の民に拾われた。〈立花〉が溶けて俗世に居る理由がなくなった彼は、子供を養い子として氷雪の聖地に連れて帰り鍛え上げた。子供は拾われる以前の記憶を失っており、唯一若い女に優しく「とうや」と呼ばれる『声』だけが耳に残っていたため「冬夜」と名付けられる。
 幼い頃のトラウマから女を傷つける行為に嫌悪を抱いており、彼の前で下衆な真似をすれば実害を与えていなくても半殺し、実行犯ならとことん苦しめ抜いて嬲り殺される。元々乏しい表情がさらに完全に凍った無表情で手を下す様は、春日でさえ後退るほど。
 女には春日を傷つけられない限り平等に優しいが、本人は無意識。故に女に好かれやすく、後腐れの無い相手限定で気が向けば遠慮なく手を出している。
「謳え、氷雨」
 
 桜璃【オーリ】:
 雪白の髪と薄紅(桜色)の双眸の少女。
 可憐、儚げ、一途、慈愛。一度決めたら決して諦めない強い信念を持つ。裏切られるより、裏切る事を哀しむ。結構すぐ泣く。争い事を嫌うが、弱いわけではない。
 春日より2歳年下。物心ついた頃からずっと春日の事を想い続けているが、妹として見られている故に想いを告げる気は無い。
(オフレコ)
 ラグナロク崩壊の衝撃から天狼を救うために跳んで来た天音が、最後の力を振り絞って生み出した子供。
 “〈心臓〉を得たラグナロク”=〈破壊神〉の力を秘めているが、制御能力を持つ〈鍵〉の遺伝子が欠けている為、覚醒すると世界一つ簡単に滅ぼしてしまう。治癒力や感応力は本来の力の片鱗。
 
 紅刃【くれは】:
 緋色の髪と朱金の双眸を持つ女神。
 嘗て人間に祭られると同時に封じられていた荒ぶれる炎蛇神。
 人型はスタイル抜群な煌びやかな美女。女王様気質で気に入らない使い手には使わせない。春日の事はお気に入り。
 
 氷雨【ひさめ】:
 濃淡のある青銀の髪と氷銀の双眸を持つ女神。
 嘗て人に祭られると同時に封じられていた荒ぶれる炎蛇神と対を成す、封じの要だった水蛇神。
 人型は十二単(氷の重ね)が似合う清冽な美女。紅刃の使い手を止められる者を主に選ぶ。今は冬夜を使い手に選んでいる。
  
 リジェネ:
 銀髪と蒼の双眸の元騎士の女傭兵。
 良くも悪くも己を偽れないヒト、故に強くなったヒト。
 エスパーダ出身の戦都の民。
 
 
◇「暁の戦女神」
 銀【しろがね】:
 最後の古代竜。
 生まれて間もなく母親と死に別れ、人間の魔術師に育てられた。幼さ故に力及ばず養い親を失って後、人里離れた雪山にて暮らす。養い親の魂が聖域の結界から開放され、再び自由を得る時をずっと待ち望んでいた。
 
 真名白【まなしろ】:
 銀の髪、金の双眸の少年。感情が高ぶると人に在らざる縦に細い瞳孔になる。心臓に母神の聖痕を持ち、母神の力を使うと聖痕の纏う輝きが皮膚を透して見える。
 世界樹の巫子・黎樹と、彼女に召喚された異世界の青年・凪の子供。早世した彼らの代わりに友であった古代竜に育てられ、ナハトとシヴァに実の弟同然に可愛がられて育つ。
 母神の聖痕を宿す肉を喰らえば不老長寿が得られるという伝説に踊らされた人間に心臓を狙われ、その際に育ての親と親しい人々を皆殺しにされた。身内以外の他人に対しては人間嫌いの人間不信。
(オフレコ)
 ルチアに面差しが似ている。特に目元と笑顔。
 
 蓮璃【レンリ】:
 深紅の髪、暁の瞳を持つ女傭兵。
 銀に逃がされた真名白を偶然拾い、放っておけず共に旅をする。
 下町育ちのお人好しで、所謂江戸っ子。面倒見がよく熱血。騙され易い。真名白の面倒をみているはずが、逆に見られている節も(苦笑)。
 
 
◇「てのひらの神様」
 ユエ【月】:
 焦げ茶色の髪、琥珀色の瞳の青年薬師。度の入っていない縁無しの丸眼鏡愛用。
 蓬莱樹の神から友愛の証に聖痕を贈られていて、深緑の蓬莱樹の葉を象った痣が右てのひらに在る。
 故郷の訛りを含め妙に愛嬌があり女子供に好かれやすい。
 優秀な薬師であり医者でもあるが、唐突に妙な薬を作り出しては親しい友人達に盛って観測する悪癖を持つ。今までに作り出した妙薬に、性転換、子供返り、育毛、獣化変身、物忘れ、夢繋ぎ等がある。コウが最も被害にあっている。
 莱葉の願いにより、不老長寿の自称万年27歳。
 (オフレコ)
 実は、元「大陸で最も名の知られた暗殺者」。
 
 莱葉【らいは】:
 『癒しの葉』の別称を持つ多種多様な薬草の原木である蓬莱樹【ほうらいじゅ】を本体とする神。薬師の守り神。
 深緑の髪と新緑の瞳を持つ爺言葉の少年。大きさは、葉の大きさである大人の手の平ほど。
 ユエとの友情歴は既に三桁を突破しており、彼の悪戯を時に呆れ、時に一緒になって悪乗りする悪友。
 笑顔が大好きで、笑顔を見るのが幸せな優しい神。
 世界中で多くの人々に慕われている。
  
 
◇「紅珠の護り人」
 コウ【紅】:(魔力の民に畏敬を込めて長とも呼ばれる)
 白髪、紅瞳の白子の青年。
 紅瞳を気味悪がった親に捨てられ貧民街で育つ。
 女性が隣に並ぶのを嫌がるような外見美女なのがコンプレックス。
 受難の相の有る苦労性。何だかんだと周りの人々の世話を焼く破目になっている。
 灰汁の強い青年貴族に借りを返済中の22歳。
 (オフレコ)
 紅蘭の転生体。
 性別以外は外見が同じ。髪色は過酷な前世の影響で真っ白に色が抜けている。
 魂まで浸食した〈澱〉が浄化しきれておらず、それ故に心身に様々な欠陥を抱えている。
 長であった頃の〈器〉を現世でも有しているが、魔力が回復しきれておらず枯渇気味。
 義弟妹達と暮らすうちに少しずつ前世の記憶を思い出していく。
 ユエから薬師の知識と暗殺者の技を受け継ぎ、家族とロキのために夜を駆る『黒月』となる。
 仕事着は漆黒の上下、漆黒の外套、白い仮面。
 
 ロキ:
 紅の現主。
 自他共に認める癖のある性格で、王家の血筋にも関わらず未だ婚約者さえいない独身貴族。しかし、見合話は常に山積み状態。
 王都と国境の中間辺りに広大な領地があり、住民からの評価も悪くは無い。
 年に何度かは渋々王都に顔を出し、その時に紅と出会った。
 貴族女性は面倒くさく、普通の女性もいま一つ張り合いが無く、いっそのことコウにユエの薬を盛って周囲を固めてしまおうかと偶に企む28歳。
 (オフレコ)
 母親を殺した父親を恨んでいて復讐を誓っている。
 
 ギルバート:
 ロキの片腕、共犯者。
 ロキに厳しくコウに甘い青年。
 (オフレコ)
 ロキの母親の年の離れた異父弟。
 
 花梨【カリン】:
 栗色の髪、若葉色の瞳。コウが偶然拾った生き倒れの娘。
 過去はあまり語らぬ明るく溌剌とした癒し系。(地獄の修行を思い出して魘されるらしい……)
 〈六花〉を探す旅をしていた氷雪の民。コウに誓いの相手になって欲しいと考えている。
 『修羅』と『羅刹』という二振りの妖刀の主。持ち主の魂を喰らう妖刀を魂の喰らい合いで競り勝ち使い手となった。妖刀に宿る魂は元々は刀を打った鍛冶師の息子達で、兄の修羅が十代半ばの外見、弟の羅刹が二十代前半の外見、時々半透明の姿で現れる。刀収納時には両腕に黒い痣が巻きついている。
 (オフレコ)
 志希の転生体。
 薄っすらとだが前世の記憶を持っており、ずっと記憶の中の愛しい女性を探し続けていた。
 コウと出会ってからはっきりと思い出す。
 
 青藍【せいらん】:
 銀髪、深海の瞳。コウが拾った自称記憶喪失の少年。
 実際、妙なところで一般常識やそれに類する知識が抜けていて信憑性はあるらしい。
 (オフレコ)
 シヴァの弟の息子。世間知らずだが要領は良い。
 一応建前は成人の儀式である強制放浪中だが、今のところ本国に戻る気は全くない。
 魔力の民の血の覚醒者。力を使うと左瞳が紅く染まる。
 
 白択【はくたく】:
 真っ白な翼を持つ狼。白狼神。
 紅蘭の友にして養い子。彼女の死の瞬間まで傍らに在った。
 彼女が転生した気配を察し、コウを見守るため子犬に擬態して傍にいる。
 
 
◇「月と夜の輪舞曲」
 ネイ:
 シヴァとナハトの一番目の子供。
 深闇の髪と紅の双眸を持つ、シヴァ譲りの中性体。外見はナハト似で優しげだが、中身はシヴァに瓜二つと周囲に嘆かれる。
 本来決して共有することの無い〈神喰い〉と紅瞳を併せ持つ世界の異端児。知る者からは〈異端の紅〉とも呼ばれる。
 何処まで本気で何処から冗談か判らない言動を取る飄々とした掴み所の無い人物。竜胆と言う名の半竜と宇宙規模の追いかけっこをしている。
 (オフレコ)
 大怪我をしてへばっていたところをユエに拾われ成り行きで一夜を共にした際に身篭り、知らぬまま看病される内に情が移り夫婦になった。奥さん遣ってる間はユエ好みのメリハリのある美女。
 ユエが天寿を全うした後は、また竜胆を追っかけがてら旅暮らしに戻る。常に琥珀の耳飾を身につけるようになる。
「また生まれ変わっておいで。何度でも見つけ出して、何度でも惚れさせてあげるよ」
「うちの故郷では、婚姻の証に自分の瞳と同じ色の石を使った装身具を贈るんだ。
 『いつでもあなたのすぐ傍に』って意味でね」 
 
 
◇「竜神の娘」
 シン:
 シヴァとナハトの二番目の子供。カルマの双子の片割れ。
 深闇の髪と黄金の双眸を持つ3人目の〈鍵〉。多少〈心臓〉の力も持つ。
 深山の如き穏やかな青年だが、活火山の激しさも隠し持っている。
 
 
◇「贖いの放浪者」
 カルマ:
 シヴァとナハトの二番目の子供。シンの双子の片割れ。
 白銀の髪と黄金の双眸を持つ真性の〈心臓〉。多少〈鍵〉の力も持ち、〈心臓〉の力を用いて自力で世界を渡る〈路〉を開ける。
 悪戯好きな元気者。
 
 
◇「死天使カインの覚書」
 カイン:
 シヴァとナハトの四番目の子供。
 黒髪黒目の母神に仕える神官。
 姉兄と違い何の力も持たない唯の人間。両親の持つ人間の血と、人間としての弱さと脆さを受け継いで生まれた青年。
 (オフレコ)
 黒き翼=かつて〈喰らった〉黒鷲神の力を背負って生まれた最初の〈神喰い〉、カインの生まれ変わり。
 本当は簡単には死ぬことのできぬ半神であるとは知らずに恋人を追って死を望み、だが死ねなかった現実に絶望した心が事実を捻じ曲げ『自殺の罪を贖うために死天使として蘇った』と記憶を書き換えた。真実を知る者達は、彼の心が決定的に壊れることを恐れ口を噤んでいる。
 何度も何度もビエラの転生体と巡り逢い恋をし続けている。
 
 
◇「君の呼ぶ声」
 夕凪【ゆうなぎ】:
 ネイの娘。
 生まれた時から誰かに呼ばれ続けている気がして、成人と共に声を求めて旅立った少女。
 魔術師の力と薬師の能力、母親から学んだ護身術を使う。
 
 志筑【しづき】:
 夕凪に命を救われた氷雪の民育ちの風の民の少年剣士。両方の特徴を持つ。
 命の借りは命で返すと夕凪の旅について来た。
 
 嵐刹姫【らんせつき】:
 夕凪に好意を寄せ、自ら棍に宿った嵐の精霊。通称、姫。
 戦闘時は雷纏う風の刃を持つ大鎌の姿に『武装』する。
 夕凪を護るためならどんな無茶も平気でする。
 
 
◇「碧玉の眠る海」
紫乃【しの】:
 白髪と紫瞳の少女。背に紅い牡丹の刺青を持ち、左右の耳に蛍石と翡翠の耳飾をしている。シヴァとナハトの世代を隔てた血族。おそらく夕凪辺りから繋がる血縁。
 戦場で蛍火に拾われ、翡翠に治癒された。二人を家族のように想っている。
 翡翠が贄になった後は翡翠と蛍火の言葉を信じ、二人を探して旅立った。
 〈紅牡丹【くれないぼたん】〉の通り名で呼ばれている。
 人の顔と名前を覚えるのが苦手。微妙に天然ボケ。感情表現豊か。
 (オフレコ)
 幼少時、海賊に浚われ奴隷にされそうになった折「背を覆う刺青を麻酔無しで彫り、その激痛に耐えられたなら開放する」と海賊の長と賭けをし、大人でも泣き喚く激痛に耐え抜き自由を手に入れた。自由の証。
 余談に、「私の勝ちだ」と鮮やかに笑った顔に海賊の長は魂を奪われたらしい。
 
 翡翠【ひすい】:
 日溜り色の髪、翡翠の右瞳と碧玉の左瞳を持つ青年。春日の世代を隔てた血族。
 蒼藍皇家の庶子にして最後の〈碧玉〉。母親は蛍火の初恋の相手である風の民の踊り子、翡蝶。下町の薬師で、右手に薬師の守り神の聖痕を持つ。月の孫弟子。
 蛍火と紫乃だけが大切で、彼らと共に生き続けるために独断で大きな賭けをした。
 碧玉の左瞳を理由に仮初の皇帝として担ぎ出された時には既に己の肉体の限界を覚っており、強引に都を遷都した後、旧都の王城にて蒼蛇神に守護の証たる『碧玉』を返して皇城と共に海底に沈んだ。前夜に、蛍火と紫乃に「必ずまた会える」と約束した。
 家族だけが大切な基本ドS。ムカツク相手を凹ませるのが大好き。何だかんだ言いながらも気に入った相手限定で面倒見が良い。
【オフレコ】
 大きな賭け:『碧玉』を手放すことで魂の自由を得、魂を自ら用意した翡翠玉に封じた。月と陽の力を蓄え込めば、在りし日の姿の幻影を具現化することも可能。
 春日が桜璃の『春日の子供が欲しい』という願いに、妹を抱くのは論外、かと言って他の女に産ませた子供を母親と引き離して春日を好く桜璃にやるわけにもいかず、苦肉の策で『紅刃と8割以上融合した春日』が冬夜との間に産んだ子供を3人で育てることで了承させた。
 翡翠はこの時の子供の子孫で、何かと似ている春日を同属嫌悪している
 
 蛍火【けいか】:
 紅髪、薄青の双眸を持つ青年。某占者がうっかり孕ませた女性の血族(浮気の動かぬ証拠とも言う)。
 常にやる気の無い態度と眠たげな双眸、どうでも良さそうな口調に「何を考えてるのか分らない」と殆どの人間に言われる。何故か幸運の女神(=運命神)の依怙贔屓を一身に受けている強運の持ち主。魔力の民の血の覚醒者で、力を行使すると左瞳が深紅に染まる。
 翡翠の腹違いの兄。母親は皇帝が気紛れに手をつけた下働きで、出産後間も無く死亡。翡翠の母親の死に立会い、幼かった翡翠を引き取った。翡翠以外の血族には劣り腹と蔑まれ絶縁状態。翡翠だけを家族として大切にしている。翡翠を態の良い生贄扱いしようとする皇族や貴族達から庇う為に、軍団長の地位にまで伸し上がった。
 ある戦場で、返り血と己の血で深紅に染まりながら独り剣を抱えて座り込む少女と出会い、彼女を放っておけずに連れ帰った。名を持たぬ彼女に紫乃の名を贈り、妹のように大切にする。紫乃の剣技の我流故の荒さや拙さを補強し磨き上げた剣の師でもある。
 翡翠が海蛇神との守護の契約を破棄した際に生じた次元の裂け目に巻き込まれ行方不明中。
 
「この国の守護神との契約を破棄し、クソったれな〈碧玉〉なんざ俺で最後にしてやる」
「この国の腐った患部、行きがけの駄賃に全部切り落としてってやるよ」
「これが、オレが皇帝として成す最初で最後の大仕事だ」
「っ!!!」
 青年は自ら左瞳を抉り取ると、静かに海原より鎌首をもたげて見守る蒼き海蛇に、その双眸と同じ色をした彼女の血族の証たる『碧玉』を差し出した。
「永きに渡り守護を与えてくれ賜うた我等が護り神。貴女に約束の終わりの証たる最後の『碧玉』をお返しします」
 ―――もう、私の守護は良いの?
「はい。貴女が約束してくださった証を持つ皇帝は俺で最後です。だから、貴女はもう自由になってください」 
 ―――そう………。では、私は行きましょう。
 ―――さようなら、最後の愛しい子。貴方達を愛していましたよ。
「我等も貴女を愛していましたよ、美しき蒼き海蛇神」
 海蛇神 碧瑠を礎に築かれていた城は彼女が離れると同時に崩れ去り、最後の主と共に海底に没した。
 
 
◇「黒白の双竜」「歌を響かせる翼」
 紫闇【しあん】:
 とある滅びた星の王家の最後の生き残り。正妃から生まれた元皇太子。好戦的な民族、修羅族。
 黒髪と深紫の双眸を持つ青年。左腕に、主を覇道に導くと言われる白き竜の姿を持つ〈神託の槍〉を生まれながら宿している。
 他国を滅ぼしては属国となしていた自国において、生まれた時より覇王となる運命を背負って生まれた王子と皆に祝福されていた。
 星が滅びる日、たった一つの大切な存在だけを抱えて脱出し、ネイに拾われる(17歳の頃)。唐紅が幼い頃はよくネイと三人で親子に間違われた。
 普段はのほほんとした兄ちゃんだが、弟が絡むと瞬ギレする。弟とネイ以外には冷酷で酷薄な面を持つ紙一重な人。弟の為なら、王となった瞬間に弟に殺される運命だと分っていても、覇道を突き進むことさえ選択できる。
 「もしも覇道に堕ちた時は、運命の歯車が回りきる前に片手足を斬り飛ばしてでも止める」と弟に宣言されている。
 
 唐紅【とうか】:
 紫闇の父親が滅ぼした国より無理やり奪われた元王妃から、彼女の命と引き換えに生まれた男児。薄い金属質の翅同士が触れ合う音が銀の鈴を鳴らす音に似ていることから銀鈴族と呼ばれる一族の最後の生き残り。歌を通じて無機物と心を通い合わせ、時に復元し、時に操る力を有する。翅は王家の血が濃いほど枚数が多く、唐紅は最大枚数の六対一二翅を持つ。
 黒髪と深紅の双眸を持つ少年。右腕に、覇王となりし者に死の祝福を与えると言われる黒き竜の姿を持つ〈祝福の槍〉を生まれながら宿している。
 やがて覇王となる兄を殺す者として、生まれた時より入口の塗り固められた塔に幽閉された。槍が別の人間に宿り直すのを防ぐ為、殺さない程度に生かされていた。
 星が滅びる日、兄に掻っ攫われ脱出し、ネイに拾われた(5歳の頃)。拾われた当初は人形のように無表情で全く言葉を喋れず、伝えたいことは直接頭の中に送り込んでいたが、それさえ滅多にしなかった。似通った容姿を持つネイに懐き母親のように慕っている。(唐紅が15、6歳になるまでネイは唐紅の望みの影響でずっと女性体で固定されていた)
 ずっと石造りの塔と〈祝福の槍〉だけを友に育ってきた為か、言葉にして意思疎通するのが苦手。人間不信かつ人間嫌いだが、根が素直で優しいお人よしな面も持つ。表情に乏しく感情の起伏も平坦気味だが、気を許した相手には無防備な笑顔を見せる。
 いつか兄が覇道に堕ちた時は片手足を斬り飛ばしてでも止めると宣言した。
 
 

 水蓮【すいれん】:
 ナハトとシヴァの5番目の子供。
 外見はシヴァに瓜二つだが性格はナハト似の魔力の民。普段から染まるほどではないが、力を使うと両目が紅く染まる〈器〉の持ち主。
 刀を春日に、薬師を翡翠に師事した。
 龍の姿をした雷の上位精霊・雷華【らいか】と契約を交していて、左腕に宿している。
 「咲き誇れ、雷華」
 

 

 

inserted by FC2 system