「千の小さき祈りに依りて」
 
 嬉しい。
 嬉しい。
 嬉しい。
 ああ、本当に―――
「ひばりさん……私を憶えていてくれたのか………」
 ねぇ、小さき人の子。
 我等土地神もまた、貴方達同様に小さきものなのだよ。
 自己で自己を保つこともできない、そんな弱きものなのだよ。
 我等は祈り無くば力を保てない。
 我等は信仰無くば存在を保てない。
 貴方達の記憶から消えたその瞬間この世からも消えてしまう、我等はそんな存在なのだよ。
 我等を存続させるは人の子の想い。
 我等の力を引き出すは人の子の願い。
 ねぇ、小さき人の子。
 どうか、憶えていておくれ。
 どうか、忘れないでいておくれ。
 貴方達が信じる限り。
 貴方達が祈る限り。
 その信仰と祈りを対価に、我等は貴方達の願いを聞き届けよう。
 小さき小さき力なれど、貴方達の手が届かぬ背中をそっと押すことはできるから。
 ささやかなささやかな力なれど、貴方達では行けぬ場所に居る迷い子の手を引くことはできるから。
 ねぇ、小さき人の子。
 我等小さき神は貴方達が好きだよ。
 貴方達の身勝手さを知っている。
 貴方達の愚かさを知っている。
 貴方達の移り気も知っている。
 なのに、どうしてだろうね。
 ねぇ、小さき人の子。
 我等は貴方達が好きだよ。
 貴方達の優しさを知っている。
 貴方達の温かさを知っている。
 貴方達の義理堅さを知っている。
 知って、いるよ。
 ねぇ、小さき人の子。
 憶えていてくれた、それだけで我等は貴方達に加護を与えよう。
 信じてくれる、それだけで我等の加護はどこまでも貴方達を護るだろう。
 忘却は罪、なればこそ、継続は尊いのだ。
 ねぇ、小さき人の子よ。
 ねぇ、我等が愛しい子よ。
 ねぇ、血の繋がらぬ、なれど我が子も同然の護るべき愛し子等よ。
 我等を知る貴方達が在る限り、我等もまた在り続けようよ。
 

 

 

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